STRIDE LAB 小田原店 店長 遠藤和子

2026.06.24

Staff stories

「ALTRA(アルトラ)」のアンバサダーにして、小田原店の店長。陸上競技の実業団に所属していた過去を持つ生粋のランナーが遠藤和子さん。これまでずっと走ってきた人生です、と話す笑顔はじつにチャーミング。小田原という地の利をフル活用して、走ること、歩くことの楽しさを店舗の現場から発信している。

文◎伊藤俊明
写真◎矢島慎一

愛称の由来は「えんどうまめ」。人当たりが柔らかく初対面でも緊張させない

ランニングの街、小田原にストライド・ラボ

週末の朝の箱根湯本駅は、インバウンドとランナーであふれていた。

箱根は温泉観光だけでなく、トレイルランニングの人気エリアでもある。箱根登山電車を上手く使えば手軽にファンランできるし、およそ50kmの外輪山周回は上級者も満足させる。ショートからロング、エントリーからエキスパートまで、コースのバラエティにはことかかない。

箱根を走る人の多くが、箱根湯本をスタート/ゴールにする。アクセスが良く、周辺に食事処も汗を流す温泉も揃っているとあれば、それも当然のなりゆき。この日行なわれたストライド・ラボ 小田原店のイベントも、ここを起点としていた。

店長の遠藤を囲むように集まった参加者は11名。小柄な遠藤のことを、仲間や常連は親しみを込めて「まめさん」と呼ぶ。遠藤は一人ひとりと親しげに挨拶をかわすことで、自然と打ち解けた和やかな空気をつくり出している。試し履きの希望者に入荷したてのアルトラの新作「エクスペリエンスフロー3」を貸し出し、準備が整ったところでゆっくり歩き始めた。

スタートの箱根湯本駅で記念撮影。前列左が案内役のゆーじさん。常連のひとりが集合場所を間違え、このあと遅れて合流

イベントは戦国・江戸から昭和を経て、いまも残る小田原周辺の遺構をウォーキングやランニングでめぐるというもの。4回目となるこの日は最終回で、箱根湯本駅をスタートし、江戸時代につくられた荻窪用水をめぐってストライド・ラボ 小田原店にゴールする。歴史があり、自然も色濃く残る小田原だからこそできるユニークな約12km、3時間のコースだ。

先導するのは小田原出身で、ふだんは南足柄市でジオガイドとして活動するゆーじさん。ランニング、登山、自転車が趣味でストライド・ラボ 小田原店の常連となり、自身の知識と経験を活かしてこのイベントを企画した。

遠藤は集団のなかを動き続け、参加者と言葉をかわしながらもさりげなく全体に目を配っている。人もクルマも多い場所では気を使うが、参加者も慣れたもので、「自転車通りまーす」「クルマきましたー」と自然に声が上がる。

清冽な空気感が印象的な早雲寺。無理をせず、歩くシーンと走るシーンが交互に続く
イベント中も会話は絶えず、終始リラックスしたムード
この日は水にまつわる遺構をめぐった。第3代の内閣総理大臣、山縣有朋の別荘に水を送った水源地にて

空いた道に入り、走り出した集団を目で追いながら噛みしめるように話す。

「ひとりでやっているので、この人数でイベントができるのは、みなさんのご協力があってこそ。本当にありがたいです」

オープン当初からイベントを繰り返し、少しずつ仲間を集めた。

毎週火曜日はナイトランの日。閉店後の19時半に集まり、5kmほどを走って小田原城で写真を撮って帰ってくる。ペースもゆっくりで、申し込み不要の自由参加だからハードルも低い。

土地柄を生かしたイベントも多い。気候が温暖で柑橘農家が多い小田原ならではのイベントが、「湘南ゴールド狩りラン」。湘南ゴールドは、温州みかんとゴールデンオレンジを掛け合わせた神奈川県産の柑橘で、爽やかな香りと上品な甘さを併せ持つ。畑まで走り、もぎたての湘南ゴールドをバックパックに詰めて帰る。かまぼこで知られる「鈴廣」まで走り、ワークショップに参加する「かまぼこづくり体験ラン」もおもしろい。いずれも、県外からの参加者もいる人気企画だ。

「小田原は買い物に来るような街ではないので、商品だけじゃなくて小田原とか箱根を絡めて紹介することは意識しています」

箱根の玄関口でもある小田原は、ランニングの街だ。海抜0mに近い小田原城の城下町はフラットだが、海を背にすればすぐに山に向かう坂道が現れる。トレイルは選び放題だし、箱根駅伝のコースをなぞる観光ランも人気だ。この街にストライド・ラボができたのは、もはや必然のなりゆきだった。

男性ユーザーが圧倒的に多いアルトラだが、遠藤効果か、小田原はウィメンズの売り上げが上回る月もあるという

まめさんのランニング・コミュニティ

遠藤は中学生で陸上競技をはじめた。長距離が好きで高校卒業後は実業団に加入。駅伝チームの一員となったが20歳で退いた。それからは市民ランナーとして走っていたが、30代でアドベンチャーレースと出会い、ごく自然にトレイルランの世界へ。

ハタチで選手生活を引退したのは、「話にならないほど遅かったから」だと謙遜するが、中学生のころからいままで、ずっと走り続けている。

走るのは「長ければ長いほど好き」だし、それが性に合っている。これまでもっとも長かったのは、フランス、アルプス山脈のモンブランを周回するトレイルレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(Ultra-Trail du Mont-Blanc)」のなかでも、もっとも過酷といわれる「UTMB PTL」。

「レオンさんの散歩道(Petite Trotte à Léon=PTL)」というかわいらしい名前が付いているが、3人チームで距離300km、累計標高差25,000m以上を走破する、えげつないレースだ。途中でひとりリタイアしたものの、遠藤はもうひとりのパートナーとともに見事にこれを完走した。

2019年に参加したUTMB PTLにて。日々50km、標高差4,000m、睡眠時間2時間という過酷なレースを151時間30分で完走した
岩場あり、氷河ありのアルプスが舞台。イタリアの標高約3,000mからのサンセット

ストライドとは、知人の紹介でアルトラのアンバサダーになった2014年からの付き合いになる。「店長をやらないか」という誘いを一度は断ったが、アンバサダーとしていくつかの店のイベントに参加するうちに、それぞれの店が独自のコミュニティをつくっているのを見て興味がわいてきた。

「販売の仕事は経験がなかったので無理だと思っていましたが、いろいろなやり方をする人がいるのを知って、店が中心になってコミュニティができているのがいいなぁと思うようになって……」

あらためて誘いを受けて決意し、2023年12月に小田原店がオープンした。

小田原は海も山も近い恵まれたロケーションにある。長い歴史があり、保守的な観光地というイメージだったが、実際に暮らしてみるとそうではなかった。昔から商売をしている人も多いが、コロナ禍を経てリモートワークが当たり前になるとともに移住してくる人が増えた。小田原市も受け入れ態勢を整えている。新陳代謝が活発で、変化を止めない街だ。

「昔ながらの商店街に新しい店ができたりして、いまも少しずつ変わっています。箱根とセットで小田原城を見に来るインバウンドもたくさんいて、新しいことが始まりそうなおもしろい街だなと思います。海も山も近くて、みなさんに紹介したい場所だらけです」

イベントがある日は試着用の靴を用意することも多い。テストは坂も階段も土もある小田原城がおすすめ
シューズは時間をかけて説明、フィッティングする。足の健康に関するアドバイスにも積極的

オープンから3年が経ち、小田原ならではのコミュニティもつくりあげた。

「常連さんたちはナイトランのあとに食事に行ったり、誘い合って山に行ったり、ロードしか走ったことがない女性同士でチームをつくってトレランのレースに出たりしています。自然に仲間ができて遊びに行ったりしているのは、すごくいいなと思っています」

最初はまったく走れなかった人が走れるようになる姿を、これまで何度も見てきた。

「散歩用に靴がほしいといってアルトラを買った人が、次は山用がほしいといってハイキング行くようになりました。歩いているうちに体重が減ったり、体力もついてきて、そうするとそれがモチベーションになって走りはじめて、このあいだついにマラソン大会にエントリーしたんですよ」

そういう人たちを見るとやりがいを感じる。成熟していくコミュニティに手応えを感じながらも、やりたいことはまだまだある。

「もう少し時間が取れるなら、山のイベントもやってみたいですね」

午後には店を開くため、現状、イベントはロードの短めのものが多い。ひとりで切り盛りしているぶん制約もあるが、かといってあきらめているようには見えない。

長距離に負けずに、たんたんと走り続ける。

これまでそうしてきたように、これからも遠藤は、自分のペースで少しずつできることを増やしていくにちがいない。

お気に入りは「アルトラ・ローンピーク 9+」。初代から最新モデルまですべて履いている。小さくて幅広の足に合っている

Profile

遠藤和子(えんどう・かずこ)
2014年からアルトラのアンバサダーを務める。2023年ストライド・ラボ 小田原店の開店時に店長に就任。地図読みが好きで山岳レースに多数参加。最近はロゲイニングを楽しんでいる。趣味は「山」で休みの日にも山に出かける。ランナーとして、2003年マウイマラソン女子10位(年代別1位)、2005年足柄アドベンチャー優勝、2013年UTMF STY(84km)女子4位など、入賞歴多数。

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